年金制度には賦課方式と積立方式がありますが、
日本を含めて各国とも賦課方式を採用しています。
しかし、少子高齢化が進む中、賦課方式が今後も続けられるとは思えません。
賦課方式は謂わば若年層から高齢者への仕送りです。
そのため、納めた保険料を将来受け取ることが前提になっていません。
したがって、「もらいすぎ」や「損をしている」といった不平、不満は筋違いというこ
とになります。
でも、実際には納めた金額に応じて受給額が決まってくるので、
損得勘定から生じる不平、不満には共感できる部分もあります。
賦課方式は高齢化によって相対的に若年層が少なくなると年金財政は苦しくなります。
それにもかかわらず賦課方式が採用されているのには理由があります。
1つは、制度発足時は高齢者に払える年金がないので賦課方式で始めざるを得ず、
いったん賦課方式で始めたら保険料は高齢者のところに行ってしまうため、
積立方式にするのは困難になるということです。
もう1つは、積立方式は物価上昇に弱いということです。
インフレが起こると積み立てたお金は目減りしてしまいます。
賦課方式であればインフレが起こっても労働者の所得が増えているはずなので、
必要な保険料を集めやすいです。
ここまで賦課方式が採用されている根拠について説明してみました。
事実に反する内容を説明するのは大変ですね。
制度発足時に支払える年金がないのはあたりまえです。
しかし、アメリカなどでは積立方式でスタートした国もあります。
日本も当初は積立方式にしようとしていました。
だから余分に徴収していた積立金がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)
で運用されているのです。
制度発足時の年金は、税金で建て替えればいいのではないでしょうか。
というより、国民年金は現状足りておらず、厚生年金が充当しているではないですか。
だったら最初から税金でやれば支払いや受け取りの多寡が不公平の種になりにくいと思
うのですが、どうしてそうしなかったのか甚だ疑問です。
また、積立金はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で運用されていて、
資産は増えています。現金のまま置かれているわけではありません。
運用実績はどのような状況ですか。|年金積立金管理運用独立行政法人 (gpif.go.jp)
積立金が現金のまま置かれているのであれば、
確かに積立方式はインフレに弱いでしょう。
でも、実際には金融資産として保有し、運用しています。
短期的な目減りを槍玉に上げて不安を煽られがちですが、
長期的に増加しているのは歴然です。
積立方式はインフレに弱いというのは事実ではなく、むしろ強いです。
弱いのは労働者のほうです。
インフレが起きれば所得が増えるのではなく、
「インフレが起きなければ所得が増えることはない」というのが正しい理解です。
そうでなければバブル崩壊以降の経済をどう説明するのでしょう。
水面下ではインフレを起こしつつも、労働者の所得が増えているとは言い難いです。
目減りしている労働所得に依存する年金制度が合理的なわけがありません。
<参考文献・資料>
日本の公的年金は「賦課(ふか)方式」~どうして積み立てておけないの? | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省 (mhlw.go.jp)